特許、アプリ開発の状況

1.本特許の意義 

この特許は、人の歩行に関する新発見に基づいています。

誰もが経験則として漠然と認識していますが、人にはそれぞれ歩くときの“自分のペース”というものがあります。このペースは”足取り”とも言われています。足取りが軽い、重いと表現され、心の状態や体調の良し悪しが端的に反映されるものと認識されています。

但し、平常時はそれがピンポイントで値を特定できるようなものなのか、あるいは比較的広い幅の中で捉えられるものなのか、また日によって変動はするのだけれどもその変動幅はどの程度なのか、どうすればそのペースを計測することができるのかということは分かっていませんでした。

弊社は、『人は無意識に、日常的に頻繁に精緻な歩行リズムを刻んでおり、そのリズムは心身の健康状態が同様である間は時や場所が変わってもほぼ一定と言えるほど同程度のリズムである』ことを発見し、この発見を背景とした特許を取得し、そのリズムを自動計測するスマホ用アプリを開発しました。

今般、特許が認証されたことで、この発見が世界的に見ても初の発見であると言えることが確認できました。漠然とは分かっていても、そこまで頻繁に同じリズムを刻んているとは想像できなかったということでしょうか。

健康における歩行の重要性に関しては多数の研究がなされてきましたが、歩数に関することとと、実験環境における歩行率、歩行速度、歩容等に関するものがほとんどで、日常生活における歩行率、歩行速度に関する研究はありませんでした。

何故なら、日常生活において自動的に歩行率、歩行速度などを計測する手立てがなかったからです。

人はのんびりしているときも急ぎのときもありますし、雑踏や坂道など歩行環境でも歩行リズムは異なります。

それでも、一日数千歩の歩数の内の「一定の歩行リズムを保って歩いている区間のみを抽出する」と、大半では無意識にその人の中枢パターン発生器に組み込まれた歩行リズムに従って歩いているため、変動係数で2%程度(68%ないし86%信頼区間で)というような高い精度でその人固有の歩行リズムを特定できます。

更に、日が変わっても2ないし3%程度の狭い変動幅で値が推移していきます。

一つの見方によれば当然かとも思われますが、別の見方からするとそこまで狭い幅なのかと驚かされます。

日々の変動が2ないし3%程度ということは、数日間の統計処理では1%未満の幅で特定できると言うことです。

 但し、これは心身の健康状態が一定に保たれている場合のことであって、心身の変調、急変が生じれば、値は大きく変わります。そして平常時の値が非常に安定しているために、小さな変化までも高感度で検出できます。

風邪や肺炎など急性疾患で倦怠感が生じれば、その変動は2ないし3%を大幅に上回る変化として現れます。

老化に伴う脚力の衰えは、年に1ないし2%というような小さな変化として現れ始めますが、数週間ないし数カ月という長期間の歩行リズムの計測はその僅かな変化傾向を見逃しません。精神的な不調でも中長期の低下傾向が現れるはずです。

同様になんらかの回復策を講じた場合の、5%というような体感することが不可能な程度の回復効果も計測値として確認することが可能になります。

  • 信頼区間の幅を狭くしているのは、日常生活では急ぎ足やのんびり歩きもそれなりの頻度で発生し、95%信頼区間で排除する異常値というような類のものではないからです。

つまり本特許は、

  • 歩行能力や健康状態が現れる歩行率、歩行速度の高精度計測を実現し、
  • その結果、体調の急変の可能性を短時間で検出することを可能にし、
  • 心の不調や老化、体力低下に伴う中長期の微細な変化の検出を可能にし、      
  • 更に僅かな回復傾向も数値として確認することを可能にしました。

2.最新の特許

【特許の名称】 歩行評価システム、歩行評価方法、そのプログラム、記憶媒体、携帯端末、及び、サーバ

【特許番号 】 特許第6774579号

【登録日  】 令和2年10月6日。申請した全請求項が認証されました。

【要約   】 【解決課題】人の歩行の計測値に基づいて、人の身体状態を正確に判定できるシステムを提供する。【課題解決手段】本発明は、計測対象の歩行を評価するシステムであって、前記計測対象の歩行を継続的に計測する計測装置と、当該計測装置の出力に基づく演算を実行する演算装置と、を備え、前記演算装置は、前記歩行の歩行周期を演算し、当該歩行周期が安定している状態の歩行を含む抽出を実行し、当該抽出の結果に基づいて、前記測定対象を評価する、ことを特徴とする。

3.発明の経緯

弊社は、常時持ち歩くスマホによって心身の健康状態を如実に反映する歩行の状態を自動計測、評価し、短期および長期の変化や変化傾向の把握を可能にすることを目指して2016年に設立されました。

当初は下記の特許を基盤に自動計測アプリを開発したものの、目標としていた測定精度を実現できず、また消費電力も大きいという課題を解決できませんでした。

この開発経験から、iPhone端末、android端末それぞれの特性を踏まえた試作アプリでのデータ収集、解析を進める中で、先の発見に至り、特許となる計測法の開発に結び付きました。

(以前に発明した特許)

【特許の名称】 レコーディング装置、携帯端末、解析装置、プログラム及び記憶媒体

【特許番号 】 特許第6113934号 (P6113934)

【特許公報発行日】平成29年4月12日(2017.4.12)

【国際公開番号】WO2016/043081

【要約   】 【課題】歩幅及び歩行速度の微細な変化傾向を高精度で検出し得るレコーディング装置、携帯端末、解析装置、プログラム及び記憶媒体を提案する。 【解決手段】携帯端末及び解析装置を備えたレコーディング装置において、携帯端末は、GPS等位置計測装置及びセンサを備え、GPS等位置計測装置から携帯端末の位置情報を取得し、センサから歩行者が平坦かつ直線を歩行しているか否かを示す計測情報を取得し、計測情報に基づいて、位置情報のうちの歩行者が平坦かつ直線を歩行している場合の位置情報のみを抽出し、抽出した位置情報に基づいて、歩行者の歩行速度及び歩幅を算出し、解析装置は、携帯端末により算出された歩行速度及び歩幅と、同一歩行者の過去の歩行速度及び歩幅とを比較し、歩行速度及び歩幅の変化を歩行者に通知する。

4.アプリ開発

(iPhone用アプリ) app storeでリリース済み。月額120円

(android用アプリ) 内部テスト用アプリを運用中。

iPhone端末とandroid端末では端末のデータ捕捉、蓄積方法に大きな違いがあるため、基本的な考え方は同じですが、アルゴリズムは異なります。理論的には、android用アプリの方が測定精度は高いです。

それでも、iPhone端末とandroid端末の両方を保持して生活した場合の両者の計測値の差異は1%前後であり、日々の計測値の変動幅よりも小さいことが確認できています。

これは、両者の計測法が正しいこと、また測定精度も非常に高いことの証でもあります。

但し、特にiPhone用アプリでは、一日の歩数が2,000歩未満の場合は測定精度が低下する場合がありますが、一週間単位で解析するなどして十分なサンプルを確保することで精度を保てるかどうかを検証中。

また一日の大半を人と連れ立って歩いた場合も、歩行率、歩行速度が大きく低下する場合があります。特に幼い子供をお持ちのお母さん方の場合は顕著です。それでも、一人で行動するときと子供連れのときとでは歩行率、歩行速度が大幅に異なるため、両者を区別して捉えることで精度を確保できることが分かってきました。

 両アプリとも消費電力量は非常に少なく、日常的な使用上の懸念はありません。